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第二創業期の企業が押さえるべき【組織社会化の基礎】とは?


第二創業期に入った企業は、数字だけを見ると順調に前へ進んでいるように映ります。

採用はうまくいき、拠点も増え、事業も伸びていく。でも、どこかで違和感が出てくる瞬間があります。

・新人が立ち上がらない…
・育成の負荷が特定の人に偏る…
・気づけば、離職がぽつぽつと続いている…

派手に問題が起きているわけではないが、現場の空気が少しざわつき始める、そんな状態が発生することがあります。

本記事では、”第二創業期”を迎えた企業が、“組織社会化の構造”を改めて整理し、第二創業期の企業が組織体制や人材育成をどのように設計すべきかを解説します。

第二創業期における違和感の正体

上記のように、第二創業期の会社では、同様のつまずきを経験することがあります。

とある会社でも、拡大スピードに合わせて新人を迎えていましたが、入社後の最初の1〜2週間で不安が溜まり、1ヶ月を過ぎる頃には行動が鈍り、3ヶ月目には「自分には向いていないかもしれない」と言い出しました。これは、本人の資質というよりは、受け入れ方の問題でした。

第二創業期の違和感の正体は、“成長の裏側で受け皿が追いつかなくなるフェーズ”です。

新人が何を理解し、どう振る舞い、誰を頼り、どう成果に向かっていくのか。その一連のプロセスを、会社としてどこまで設計できているか。この差が、新人の立ち上がりと、離職の有無をはっきり分けます。組織としての“適応の土台”、つまり組織社会化を整えた上で、採用を進める必要があります。

組織社会化とは、新しく入った方が、

  • 何を理解し
  • どう振る舞い
  • 誰と関係を築き
  • どのように成果に向かっていくのか、

を身につけていく一連のプロセスです。

単なる「会社に慣れること」ではありません。環境の理解、役割の把握、文化の解釈、関係性づくり、成果行動の獲得が、同時に進んでいきます。複雑で、負荷の高い過程です。

特に立ち上がりを左右するのが、次の3つの要素です。

①役割明確性
自分が何を任され、どこまでを期待されているのかが揺らがずに理解できていること。

②自己効力感
この環境で成果に向かってやっていけるという、現実的な手応えがあること。

③社会的受容
困ったときに頼れる相手がいて、孤立していないという安心感があること。

この3つがそろうと、人は判断が安定し、自分の意思で行動を進められます。逆に一つでも欠けると、不安が蓄積し、立ち上がりが遅れ、早期離職の可能性が高まります。

第二創業期はなぜ揺らぎやすいのか

第二創業期は、組織にとって3つの条件が欠けやすい環境下にあります。具体的には次のようなことが発生しやすいためです。

  1. 役割が揺れやすい(役割明確性の欠如)
    事業のスピードが速く、役割や期待が短期間で変化します。新人からすると、「どこで貢献すべきか」が掴めず、正解の基準に手が届きません。
  2. 成功体験が積みにくい(自己効力感の低下)
    成長に合わせてマネジャーが若くなり、育成設計が整い切らないことが多くなります。必要な説明が抜け、段階的な成功体験の設計も弱くなり、「やっていける感」が得られません。
  3. 関係構築の偶発性が消える(社会的受容の不足)
    多拠点化、オンライン連携、属人化した引き継ぎにより、自然に助け合う構造が薄くなります。相談窓口が見えないまま業務が進むため、孤立感が強まりやすくなります。

自然には成立しないからこそ、“設計”が必要になる

だからこそ、この段階の企業に求められるのは、役割理解・成功体験・関係構築の3つを意図的に設計するオンボーディングです。

新たに研修を追加するだけでは問題は解決しません。必要なことは、“新人が動ける状態”になるまでの構造そのものを整えることです。

組織社会化の前提である 役割明確性・自己効力感・社会的受容 を揃えるために、第二創業期の企業がまず整えるべきは、1.役割 2.関係性 3.文化 4.成果行動 の4つの設計です。しかし、これらは単体では機能しません。仕組みとして全てを一体で扱うことが必要です。

1. “役割”の設計

第二創業期では、役割が変わり続けるのが日常です。昨日まで必要だったタスクが急に不要になり、誰の領域か曖昧な仕事が自然発生する。この環境下では、どれだけ優秀な方でも 努力の方向性が掴めません。必要なのは、最初の90日だけでも「この範囲を担う」という輪郭を固定することです。

すぐに取り組むべきは、例えば次の設計です。

  1. 初期90日で求める成果と、やらなくていい領域を明確にする
  2. “期待値の解像度”を、上司と人事の双方で揃える
  3. ロールモデルを見せ、「評価される行動」を視覚化する

役割が曖昧なまま走らせると、自信は必ず落ちてしまいます。最初に整えるべき土台が、この役割です。

2. “関係性”の設計

第二創業期は拠点や部署が増え、自然な助け合いが薄くなります。新人は「誰に聞けば正解なのか」を自力で探さなければならず、これが社会的受容の欠如につながります。

必要なのは、相談の線を組織側が先回りして用意することです。

具体的には、

  • 専属の初期伴走者(バディ・メンター)を置く
  • 朝礼、1on1、夕会など相談しやすい「定点」をつくる
  • チームの役割(誰が何に強いか)を見える化する

「困ったら聞けばいいのに」というのは、構造の欠如を個人に転嫁した言葉です。 新人は“相談してよい相手”が見えなければ動けません。

3. “文化”の設計

第二創業期では、創業期の価値観、制度化の途中にある文化、新規事業的な”ノリ”など、複数の空気が混ざり合います。この混在こそ、新人の判断基準を最も揺らす要因です。

必要なのは、文化を翻訳する人と、その文化を言葉にした“説明可能なガイドライン”です。

たとえば、

  • 価値観を行動レベルの事例に分解して示す
  • NG行動も含めて、判断の境界線を可視化する
  • 初期30日で伝えるべき文化の“最優先70%”を決める

文化が説明されないと、新人は「正しくやれているのか」の判断基準を持てません。これは効率性ではなく、心理的安定の問題です。

4. “成果行動”の設計

第二創業期の組織では、成果指標だけが先に提示されることが多いです。しかし、新人に必要なのは 数字ではなく、数字に至るまでの行動の型 です。営業なら、訪問の型・ヒアリングの型・提案の型。オペレーションなら、判断基準・言葉のトーン・優先度付けなど。

すぐに整えるべきことは、

  • 成果につながる行動の流れを「一本の線」で示す
  • つまずきやすいポイントを、事前に言語化しておく
  • 成功体験を積むためのステップを細かく分解する

行動の型が見えた瞬間、自己効力感は一気に安定します。不安の正体が「やり方の不明瞭さ」だったと気づくからです。

4つは“仕組み”として一体で機能する

役割が明確になると、行動の型が理解できます。
行動の型が理解できると、成功体験が積めます。
成功体験が積み重なれば、相談の線が自然と太くなります。
相談が増えると、文化の解像度が上がります。

この循環が回ったとき、人は安定して動けるようになります。組織社会化とは、この循環をいかに早く、いかに確実に回せるかだけです。第二創業期の企業では、この循環の“最初の一手”が欠けやすく、そこから立ち上がりの遅れが連鎖します。だからこそ、4つの要素は「順番」ではなく「一つの構造」として扱う必要があります。

おわりに

第二創業期を迎える企業では、採用が加速し、人が増え、事業が拡大していきます。
しかし、そのスピードに反して、組織の“受け皿”だけが初期フェーズのまま取り残されることが珍しくありません。表面上は成長しているようで、裏側では新人がつまずくポイントが静かに増えていきます。

特に第二創業期のような変化量の大きい環境では、「そのうち慣れる」は通用しません。組織社会化は自然に進むものではありません。

だからこそ、採用が進み、拠点が広がり、役割が次々に生まれていく中で、組織として本当に向き合うべきテーマは「迎え入れる力の再構築」です。入社してからの数週間、数十日の経験が、その後数年の成長曲線を決めます。

オンボーディングは、単なる入社対応でも、研修の一種でもありません。組織として、社員メンバーの「未来の時間を預かる行為」です。社会化の仕組みを整えるということは、個人を育てる以上に、組織の未来をつくる営みそのものです。

そして、組織社会化の設計とは、制度ではなく、組織が未来に向けて示す覚悟です。第二創業期の勢いを、一時的な伸びではなく、長期的な強さへと変えていく。その鍵を握るのは、迎え入れる構造を丁寧に整えられる企業です。この一連のプロセスを真剣に扱う企業こそが、これからの競争環境で長く、強く、生き残っていきます。


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