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フィードバックはする側とされる側のスタンスが重要! “フィードスタンス”の実践


新入社員の入社後の定着と早期戦力化を支える、オンボーディングクラウドサービスを開発・提供するOmboと申します。

今回の記事では、組織づくりにおいて非常に大切なフィードバックについて解説していきます。フィードバックを伝える側と受け取る側のよくあるミスや、その上で「フィードスタンス(Feedstance)」という考え方についてです。オンボーディングにおいても非常に鍵になる場面です。メンバーの活躍をフォローする人事やマネジャーの皆さん、そして経営者の方に読んでいただけたら幸いです。

フィードバックが組織の文化を醸成する

今回の記事の結論としては、組織として強力なフィードバック文化を醸成すること、その上でフィードバックをする側と受ける側のスタンス設計を行うことが、非常に重要であるということです。

そもそも、上司からのフィードバックがない状況では、暗闇の中を歩くようなもので、不安を抱えたまま仕事を続けることになります。部下は自分の進む方向が正しいのか、努力が認められているのかがわかりません。場合によっては「自分は期待されていない」と感じてしまい、モチベーションが低下します。その結果、パフォーマンスも落ち、さらに上司の期待も下がるという負のスパイラルに陥ることも考えられます。

一方で、フィードバックの実践は、近年ますます複雑化しています。転職が当たり前の時代で、価値観やバックグラウンドの多様化、過度なハラスメント要求による慎重なコミュニケーションなど、フィードバックの難易度を高める様々な要因が散在しています。「当たり前」の解釈が人によって大きく異なることもあるでしょう。例えば、ある企業では高く評価される行動が、別の企業ではネガティブにうつるケースも珍しくありません。このような「判断基準の衝突」は、組織文化の醸成において大きな障壁となり得るのです。

する側とされる側のスタンス「フィードスタンス」

フィードバック+スタンス="フィードスタンス"

このような環境下でフィードバックを効果的に行うには、フィードバックをする側のスタンスとされる側のスタンスを組織的に意識的に形成することが重要です。

ここでは造語ですが、「フィードスタンス(Feedstance)」と呼びたいと思います。フィードスタンスとは、フィードバックを行う側と受ける側の双方が、適切な姿勢(スタンス)を持つことの重要性を強調した造語です。フィードバックを単なる一方通行のコミュニケーションではなく、相互理解と成長のための対話として捉え直すものです。

具体的な例を交えて、フィードスタンスについて学んでいきましょう。


Feedstanse:「する側」のよくあるミス

無意識のうちに誤ったフィードバックになっていないか確認するところから始めていきましょう。まずは、フィードバックを「する側」が陥りやすい7つのポイントと対策についてお伝えしていきます。

7つのフィードスタンス(する側)

①内容が曖昧
例えば、「◯◯さんアウトプットの質が低いですよ。」といった抽象度の高いフィードバック。対策としては、簡単に具体化が行えるフレームワーク「SMART」で的確な指示を行いましょう。

SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限付き)の頭文字。例えば「来月のプレゼンでは、顧客の具体的なニーズを3つ以上盛り込んでください」と伝えると効果的です。

②タイミングが遅い
例えば、案件が失注した後で、2週間前の初回商談へのフィードバック。対策としては、「24時間ルール」を意識することです。

24時間以内にフィードバックすることで、状況が鮮明なうちに改善点を共有できます。例えば、商談後に15分のフィードバックタイムを設定する前提で予定を組む。難しそうならチャットツールで早めに共有するなどが適切なフィードバックに繋がります。

③一方的かつネガティブ
例えば、できていないこと10個をまとめて箇条書きで、Slackにてフィードバック。対策としては、「Good&Moreフィードバック」です。

良かったポイント(Good)は良いと伝えることは継続した好パフォーマンスに役立ち、その上で改善点(More)は、期待値を伝えることになるので、モチベーションを保ちながらも改善点を伝えられます。

④背景の説明がなくピンポイント
例えば、「この数字、間違ってますよ」「さっきのヒアリング、◯◯が抜けてたよ」で終わってしまうフィードバック。対策としては、「STAR(状況・課題・行動・結果)」というフレームワークで語ることです。

STARは「Situation(状況)」、「Task(課題)」、「Action(行動)」、「Result(結果)」の頭文字をとった言葉で、相手にシチュエーションが論理的に伝わりやすくなります。『先日の顧客ミーティングで(状況)、売上予測の説明が必要でした(課題)。あなたは前年比で説明しましたが(行動)、顧客は具体的な数字を求めていました(結果)。次回は絶対値も併せて示すと良いでしょう。』といったイメージです。

⑤フィードバックの一貫性がない
例えば、先週は「細かく報告して」と伝え、今週は「報告しすぎ」と伝えてしまうこと。対策としては、チーム共有のルールブックを作成するといった手段があります。

「報告の頻度」「報告の詳細さ」「問題解決の自主性」などの項目を5段階で評価するルールブックを作成し、チーム内で共有します。これにより、評価基準が明確になり、一貫性が保たれます。

⑥行動よりも結果にのみフォーカス
例えば、「今月未達でしたね」で終わってしまうコミュニケーション。対策としては、プロセス評価と成長マインドセットづくりが有効です。

『目標は達成できませんでしたが、新しい営業アプローチを3つ試したことは評価できます。特に、SNSを活用した顧客開拓は今後の可能性を感じます。次はこの経験を活かして、さらなる改善を期待しています。』と伝えてみましょう。

⑦新入社員の視点や意見を無視する
例えば、「あなたの前職とは違うから」「まだ若手で経験が浅いから」で一蹴するフィードバック。対策としては、「ブリッジ・コミュニケーション」を意識すること。

積極的傾聴、相互学習の促進、経験の価値を認めるなど、上司と中途入社の部下が互いの経験や知見を尊重し、それらを組織の成長に活かすコミュニケーションを取りましょう。まずは相手と自分の考え方の違いと背景を理解するところから始めます。

以上、7つの「する側」のよくあるミスを見てきました。相手のパフォーマンスを引き出す一方で、自信を奪い、立ち上がりが返って遅くなってしまう可能性も引き起こしますフィードバックされる側の視点から見て、再度自分自身や組織のフィードスタンスを見直しましょう。

Feedstanse:「される側」のよくあるミス

フィードバックはする側だけでなく、「される側」のスタンスも非常に重要です。される側が陥りやすい5つのポイントと対策について記載していきます。

5つのフィードスタンス(される側)

①個人攻撃と捉えてしまう
例えば、上司の「このレポートの構成を見直してください」という指摘に対し、「私の能力を否定されている」と感じてしまう。対策としては、固定マインドセットから成長マインドセットへの転換をすることです。

これまで自信があった領域だと特にフィードバックをネガティブに感じてしまうことがありますが、組織が変わるとルールも変わります。フィードバックを個人への批判ではなく、成長機会と意識的に捉えます。前向きに考えることで、建設的な姿勢を維持できます。

②黙って一方的に受け入れてしまう
例えば、上司の「もっと積極的に発言してください」という指摘に対し、自分の性格や状況を説明せずに黙って頷くこと。対策としては、性格の共有を含めた相互コミュニケーションの場を設定することです。

フィードバックを受けた際は、自分の状況や考えも伝えましょう。例えば、「理解しました。ただ、自分より経験がある人が発言する中で、経験値が劣る自分が発言することに躊躇することがあります。どのようなタイミングで発言すべきか、アドバイスいただけますか?」と返すことで、より具体的で有用なフィードバックを引き出せます。

③情報過多で処理しきれない
例えば、複数のマネジャーや先輩からフィードバックを受け、重要なポイントを見失ってしまうこと。対策としては、改善点の優先順位付けと段階的実践を行うことです。

フィードバックを受けた後、最も重要な1〜2点に絞って取り組みます。例えば、「今回のフィードバックの中で、まず取り組むべき点は何でしょうか?」「◯◯さんからは〜というアドバイスを受けておりますが、どちらを優先するべきでしょうか」と上司に確認し、優先順位をつけて段階的に改善していきます。また、各フィードバックを書き起こすと、共通した改善ポイントが見えてくるかもしれません。

④表面的に受け止める
例えば、上司からの「もっと詳細な報告が必要です」というフィードバックに対し、単に報告の量を増やすだけで質を考慮しないこと。対策としては、具体例を求めて本質を理解することです。

フィードバックを受けた際は、具体例を求めて本質を理解します。例えば、「ちなみに、詳細な報告とは具体的にどのような内容を指しますか?」と質問することで、具体的な事例を教えて貰ったり、期待される報告の質や内容を明確にします。

⑤一時的な改善だけで終わらせる
例えば、プレゼンテーションスキルについてフィードバックを受けた後、次の1回だけ気をつけて、その後は元の習慣に戻ってしまうこと。対策としては、次回の1on1アジェンダに組み込み、継続的改善サイクルを構築することです。

フィードバックを受けた項目について、定期的に自己評価し、上司に進捗を確認します。例えば、月に1度「プレゼンテーションスキルの改善状況はいかがでしょうか?」と上司に確認し、継続的な改善を心がけます。

フィードスタンスの実践がしなやかな組織成長へ

以上、する側とされる側双方の注意すべきポイントを見ていきました。
フィードバックは、単なる情報のやり取りではありません。しなやかな組織成長をもたらすための重要な要素です。この記事では、効果的なフィードバックを実現するためには、「フィードスタンス(Feedstance)」を紹介しました。

改めて、フィードスタンスとは、フィードバックをする側とされる側の双方が持つべき姿勢や心構えを表す造語です。フィードバックにおいてはスタンスが重要と強調することが、組織の文化そのものを形作る基盤となるものです。

フィードバックへのスタンスづくりは一朝一夕にはできませんが、まずは既存社員の間で実践しつつ、オンボーディング期間での設計から始めることでしなやかな組織へと繋がっていきます。ぜひ素敵なフィードバック文化から強い組織づくりを始めてみましょう。