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無知・無能・邪魔・無礼が従業員の思考を止めるー心理的安全性が欠如する組織とは?


組織の中で、「なぜ誰も意見を出さないのか」「なぜ質問が増えないのか」と感じたことはないでしょうか。採用した人材の能力が低いわけでもなく、決してモチベーションがないわけでもない中で、それでも、現場では考える人が増えない状態です。こうした状態は、個人の問題として語られがちです。例えば、「主体性が足りない」「受け身だ」「育て方が悪い」といった具合です。

しかし、そう結論づけた瞬間に、組織は本来向き合うべき論点を見失います。従業員が考えなくなるとき、そこには必ず共通する「構造」があります。その構造とは、本人の意欲や能力ではなく、「どう振る舞えば安全なのか」という判断が、日常的に行われている状態を指します。

本記事では、「無知・無能・邪魔・無礼」という4つの不安が、どのように従業員の思考を止めていくのかを整理し、その背景にある組織設計の問題を掘り下げていきます。

思考停止は、個人の問題ではなく環境への適応である

組織の中で社員やメンバーの思考が止まるとき、それは多くの場合、環境に対して合理的に適応した結果として起きています。

人は、評価されない行動や、不利益につながる可能性のある行動を、自然と避けます。職場も例外ではありません。発言や判断にリスクが伴う環境では、考えることそのものが回避対象になります。

無知・無能・邪魔・無礼という4つの回避軸

思考を止める環境には、共通する4つの不安があります。

  • 無知だと思われること。
  • 無能だと思われること。
  • 邪魔だと思われること。
  • 無礼だと思われること。

これらは感情の問題ではなく、職場における行動選択の基準です。いわゆる心理的安全性の欠如というのは、この4つの問題が組織内に存在している状態のことです。

思考よりも”振る舞い”が最適化されるプロセス

この状態が続くと、従業員の関心は次第にすり替わっていきます。

本来考えるべき、

  • 何を考えるべきか。
  • どんな仮説を立てるべきか。
  • どう改善すればいいか。

こうした問いは退いてしまい、その代わりに、

  • 今は黙っていた方がいいか。
  • 誰に確認すれば責任を回避できるか。
  • どこまで関わらないのが安全か。

といった問いが前面に出てきてしまいます。

これは決して怠慢ではなく、組織内で生き延びるための、極めて合理的な最適化です。

思考停止が組織全体に及ぼす影響

思考が止まると、判断は一部の人に集中します。学習は属人化し、改善は事後対応になります。結果として、現場は忙しくなり続けているのに、組織としての再現性は高まりません。採用や配置を増やしても、問題は解消されず、むしろ負荷は増幅します。

ここで重要なのは、これは文化や雰囲気の問題ではなく、設計の問題だという点です。

思考が止まる組織では、考えることが「割に合わない」

少し視点を変えてみます。もしあなたが現場のメンバーだとして、こんな経験が続いたらどう振る舞うでしょうか。

  • 仮説を出したが、採用されなかった。
  • 改善案を出したが、「一度持ち帰ります」で終わった。
  • 違和感を伝えたが、結論は別の会議で決まっていた。

一度や二度なら、まだ良いかもしれませんが、こうした経験が続いたとしたら、どうでしょうか。

「考えても、何も変わらない」そう感じた瞬間に、思考することがコストになるのです。

考えるには時間がかかる上に、結果が出なければ責任の気配だけが残ってしまう。そうなのであれば、前例に従い、黙って実行してしまう。これは決して怠慢ではなく、その組織で生き残るための、極めて合理的な選択です。

組織は「考えない前提」で仕事を再設計していく

ここで、組織側に目を向けます。
現場から考えが出てこず、判断が遅れ、ミスを怖がっているとしたら、経営層やマネジメント層は無意識に次のように考えます。

  • 判断は上でまとめた方が早い。
  • 確認を挟めば事故は減る。
  • 前例に寄せれば説明が楽になる。

一つひとつの対応策は、もっともです。しかし、こうした判断が積み重なると考えなくても仕事が回る組織が完成してしまいます。

この時点で、考える人は「浮く存在」になります。考えない人ほど、安定します。ここまで来ると、 「考えない」のではなく「考える理由がない」状態になってしまいます。

無知・無能・邪魔・無礼は「原因」ではない

ここで、「無知・無能・邪魔・無礼」の話に戻ります。これらは、思考停止の原因ではありません。考えても使われない環境では、残るのはリスクだけです。

・発言すれば、無知に見えるかもしれない。
・踏み込めば、邪魔だと思われるかもしれない。
・空気を読まなければ、無礼になるかもしれない。

そう考えたとき、黙ることは消極性ではなく、合理性です。
つまり順序は逆なわけです。

不安が思考を止めたのではなく、思考が報われない構造が、不安を「正しい判断」に変えてしまっているのです。ここを取り違える限り、どれだけ「心理的安全性」を語っても、行動は変わりません。

健全な対立が起きている組織は思考が止まらない

思考が止まらない組織には、心理的安全性が高いという共通点があります。ただし、ここで言う心理的安全性は、居心地が良い、衝突が少ない、といった意味ではありません。

健全な対立が、日常的に起きていること

それが、思考が止まらない組織の特徴です。その前提にあるのが、いくつかの「正しさ」を捨てるという選択です。

①”ミスを減らす設計”を最優先にしない

ミスを減らすことを最優先にした組織では、対立は歓迎されません。意見の違いはリスクであり、議論は空気を乱すものとして扱われます。

結果として、衝突しない意見だけが残り、思考は表に出なくなります。思考が止まらない組織は、ミスをゼロにする設計を最優先にしません。

それよりも、異なる判断が出てくる余地を残すことを重視します。ミスは起きる。だが、対立が起きない組織の方が、長期的にははるかに危険なのです。

②全員が同じ理解を持つことを目指さない

心理的安全性が低い組織では、認識のズレは問題とされます。

話が噛み合わないことや理解が揃っていないことは、停滞に繋がります。議論は先送りされ、対立は消えていきます。

一方、思考が止まらない組織は、全員の理解が揃うことを前提にしません。

ズレたまま話すことや、前提が違うまま議論することを厭わず、進めていきます。その状態は決して「未熟」ではなく、健全な対立の入口として扱われます。理解を揃えるより、ぶつけることを優先する、そうした組織の設計が、思考を前に進めます。

③「上に行けば正解がある」という期待を持たせない

正解が上にある組織では、対立は無意味になります。

「どうせ最後は決まっている。」
「自分の意見は途中経過にすぎない。」

そう学習した瞬間、人は考えるのをやめます。思考が止まらない組織は、この期待を意図的に壊します。上に行っても答えはない。あるのは、問いと仮説です。だからこそ、現場での対立に意味が生まれます。対立は、正解に近づくためではなく、より良い問いを作るためのプロセスになります。

④対立した人が損をしない設計をする

最後に、最も重要な点です。

健全な対立が成立しない最大の理由は、対立した人が評価で損をすることです。

・波風を立てない人が得をする。
・空気を読む人が評価される。

この構造がある限り、どれだけ心理的安全性を語っても、対立は起きません。

・考えた結果、ぶつかったのか。
・考えずに、たまたま正解したのか。

この違いを見ようとする姿勢が、対立を「危険」から「価値」に変えます。

心理的安全性は、対立が起きても壊れないという確信

ここまで見てきた通り、心理的安全性が高い組織とは、衝突が少ない組織ではありません。衝突しても、関係が壊れないという確信がある組織です。

ミスを恐れず。
ズレを許す。
正解を押し付けず。
評価で潰さない。

こうした前提が揃ったとき、対立は攻撃ではなく、思考のエネルギーになります。思考が止まらない組織は、優しい組織ではありません。対立に耐えられる組織です。

意見が割れても、関係が壊れないという確信

これを、設計として持てているかどうかです。組織で起きている問題の多くは、誰かが間違っているからではありません。何を前提に、仕事や評価を組み立ててきたか。その帰結が、今の姿として表れているだけです。

もし今、「現場が考えない」「判断が集まりすぎている」、そう感じているなら、変えるべきなのは人ではなく、前提です。思考は、求めるものではありません。対立に耐えられる前提が整ったとき、静かに、しかし確実に成立します。


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