eyecatch

「マネジャー不足」と「マネジメントの難易度向上」を乗り越えるために組織が考えるべきこと


新入社員の入社後の定着と早期戦力化を支える、オンボーディングクラウドサービスを開発・提供するOmboと申します。

今回の記事では、最近よく耳にする「マネジャー問題」について解説していきます。

「マネジャー不足やマネジメントの難易度が向上している」という事象を切り口に、まずは抽象度が高い「マネジメント」という役割について整理していきます。会社における現在のフェーズで求める役割と、マネジャーに対して組織ができるフォローアップについてまとめます。そうした中で、本人の得意不得意なマネジメント領域とスキルを整理し、期待値調整をする必要があるという旨を述べていきます。

Omboでは、人材が早期に戦力化し、定着するまでの一連のプロセスや期間を「オンボーディング」と定義していますが、マネジャー問題とも密接に関わってくる課題だと捉えています。メンバーの活躍をフォローする人事やマネジャーの皆さん、そして経営者の方に読んでいただけたら幸いです。

そもそも「マネジメント業」とは?

マネジメントは、単なる業務進行の管理役ではなく、組織が効率的かつ持続的に成果を上げるための重要なプロセスです。ピーター・ドラッカーは、マネジメントとは、「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しています。マネジメントの基本的な役割には、タスク管理や人材育成、戦略的意思決定など多岐にわたるスキルが必要とされています。

そのため、一言で「マネジメント」と言っても、企業ごとや現場視点では、その領域や役割が多岐にわたります。企業フェーズ別に求められるマネジメントスキルや業務範囲、企業がマネジャーにできるフォローアップ内容を整理していきます。

人材育成と組織文化の推進が重視されている

その中でも特に、現代では「人材育成」と「組織文化の推進」が重視されています。Gallupの調査によると、従業員のエンゲージメントは上司との関係に強く依存しており、マネジャーが良好な関係を築くことができれば、組織全体のパフォーマンスが向上します。リモートワークも広がる中で、「信頼の醸成」や「透明性のあるコミュニケーション」も強く求められています。

さらに、Harvard Business Reviewによれば、現代のマネジメントでは「従業員エクスペリエンス(EX)」が重要視されており、単なる業務管理だけでなく、従業員の満足度や働きがいに注力することが求められています。

マネジャーの役割を整理

企業フェーズ別に、求められるスキルと、組織がマネジャーにできるフォローアップ内容をまとめています。その会社ごとで、マネジメントの定義を探っていくことが重要です。

これらをみると、フェーズ別で求められることが多岐に渡るということがよくわかりますが、個別の人材を一括りに考えない方が良いという点に注意が必要です。例えば、フェーズが浅い段階で活躍できたマネジャーが、次のフェーズでも活躍できるとは限らないという具合です。

だからこそ組織では、今必要なマネジメント能力・スキルと業務範囲の優先順位を決める必要があります。

企業フェーズ① スタートアップ(初期)

【マネジャーに求められるスキルや業務範囲】

・プレイヤーとしての業務遂行能力
・チームビルディング
柔軟な意思決定能力
・迅速なタスク管理

▼企業がマネジャーにできるフォローアップ

  • 外部メンターやアドバイザーの導入: 経験豊富なメンターからの助言を受けることで、マネジャーの意思決定を支援。
  • 成長機会の提供(研修・コーチング): 定期的な研修やコーチングを実施し、マネジメントスキルを向上させる。
  • 業務の委任とアシスタントの配置: 日常業務をアシスタントやジュニアスタッフに委任し、マネジャーが重要な業務に集中できる環境を整える。
  • プロジェクト管理ツールの導入: タスクや進捗を可視化するためのツールを提供し、業務の効率化を図る。
  • 定期的な経営陣とのカジュアル1on1: 経営陣が定期的に業務以外の1on1を実施し、マネジャーの心理的安全性の確保や悩みを把握する。

企業フェーズ② スタートアップ(成長期)

【マネジャーに求められるスキルや業務範囲】

・チーム規模拡大への対応力
人材採用・育成
・プロジェクト管理
・リーダーシップとコミュニケーションスキル

【企業がマネジャーにできるフォローアップ】

  • 採用プロセスのサポート: 新しいメンバーの採用にあたって、マネジャーが選考や育成に関与できる体制を整える。
  • 人材育成プログラムの導入: 社内研修を通じて新入社員や既存メンバーの育成をフォロー。
  • プロジェクト管理支援ツールの提供: 業務の進捗管理やコミュニケーションの円滑化を支援するツールを導入。
  • リーダーシップ研修の実施: 成長期に求められるリーダーシップスキルを強化するための研修を定期的に実施。

企業フェーズ③ ミドルステージ

【マネジャーに求められるスキルや業務範囲】

・戦略的意思決定能力
KPI設定と達成
組織内コミュニケーションの円滑化
・変革マネジメントスキル

【企業がマネジャーにできるフォローアップ】

  • オフサイトミーティングの実施: 他のマネジャー同士とのつながりをつくり、マネジャー同士で相談しやすい状況を生む。
  • KPI達成支援ツールの導入: KPIの設定や進捗をトラッキングするためのツールを導入し、マネジャーをサポート。
  • フィードバック文化の醸成: 定期的なフィードバックの機会を設け、チームのパフォーマンス向上を図る。
  • 変革マネジメントに関するトレーニング: 組織変革に必要なスキルを身につけるためのトレーニングを実施。

企業フェーズ④ 大企業・安定期

【マネジャーに求められるスキルや業務範囲】

・中長期的な戦略策定能力
・クロスファンクショナルな調整力
組織文化の維持・強化
部門間の調整・リーダーシップ

【企業がマネジャーにできるフォローアップ】

  • 中長期目標設定のサポート: 組織全体の目標に沿った中長期のビジョンを設定し、マネジャーが理解・共感できるようにする。
  • コミュニケーションの活性化: 部門を横断したコミュニケーション活性化施策
  • リーダーシップ開発プログラムの提供: 長期的なリーダーシップスキルを育成するためのプログラムを提供する。

マネジャーが注力すべきこと

上記の通り、フェーズや業務・求めるスキルを棲み分けていくと、もともと「一点突破」できていたようなプレイヤーがマネジャーになった途端に、全知全能のオールマイティを求められるのは違うということに気づきます。

だからこそ、マネジャーは、何にこだわり、何を効率化するのかを決める必要があります。ギャップというのは理想の状況がイメージできてはじめて生まれるものです。フェーズごとのスキルや業務領域を参考に、自社における注力事象を考えましょう。

よくある失敗

一般的に、マネジャー選出の際に、このような事象が発生することがあります。

  • プレイヤーとして優秀なためマネジャーに登用するが、マネジャーに求めるスキルは会話ができていない
  • 下が詰まっているため、組織都合でマネジメント枠を設けるが、求めている内容がすり合わせできていない

このようなプロセスを踏んでしまうと、組織としてマネジャーに登用する理由が不明確なため、「社内に説明ができない」「評価軸が曖昧になってしまう」「求められているものが不明なためアクションがズレてしまう」「優秀なプレイヤーだった人は自分自身の成果の出し方を周囲に求めてしまう」などの失敗が起きてしまいます。

上司との期待値調整

ここまで、マネジメントの定義と、今のフェーズでのマネジャーに求められる内容が明確にしていきました。あとはマネジャーの上司(経営陣・役員など)とマネジャーでの期待値調整を行うことが重要です。

上司からは現在求めていることや、マネジャーに選んだ背景、本人の得意領域をきちんと説明した上で、マネジャーに納得してもらいます。マネジャーからも不明点があればすり合わせるとともに、これまで経験がない業務や、これから伸ばしていくスキルがあれば、その旨を伝えることが重要です。一方的ではなく、両者が納得したコミュニケーションが取れれば、上手な落とし所も見えてきます。

そのようなプロセスを経た上で、本当に集中すべきである「事業」や「顧客」に対して、前向きに、本質的に取り組むことができるようになります。マネジャーがマネジメントするチームへのポジティブな影響も期待できるのではないでしょうか。

組織全体の成長と個々の社員のエンゲージメントの両立へ

マネジメントと言っても業務範囲と求められるスキルが多岐に渡るため、何にこだわり、何を効率化するのかを決める必要があります。会社としても今のフェーズで必要なマネジメント能力やマネジャーの定義付け、本人が得意不得意なマネジメント領域とスキルを整理し、期待値調整をする必要があります。

そうすることで、マネジャーが自らの強みを発揮し、チーム全体のパフォーマンスを最大化することが可能になります。企業や組織は、マネジャーに対して過剰な負担をかけるのではなく、適切な役割分担とサポートを行うことで、ようやく組織全体の成長と個々の社員のエンゲージメントを両立させることができるでしょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!ご興味ある方は、ぜひ、Ombo X等もフォローをお願いします!