SaaS業界未経験者が入社時に押さえておきたい、早期活躍のための5つのスタンス
新入社員の入社後の定着と早期戦力化を支える、オンボーディングクラウドサービスを開発・提供するOmboと申します。
SaaS業界が急速に成長を続ける中で、SaaS未経験者の方の入社についてご相談いただくことが増えています。今回は、そんなSaaS未経験者の方向けに、早期活躍のために押さえておきたい5つのポイントを作成しました。SaaSで働く現場のマネジャーや役員の皆さまと会話をする中で見えてきた共通する大事なポイントをまとめています。
結論から申し上げますと、次の5つのポイントが重要なスタンスです。
- Changeマインド 〜トレンドもプロダクトも常に変化する〜
- コミュニケーションがキー 〜SaaSはいかに他ファンクションと会話できるか〜
- 再現性とこだわり〜効率型組織の中で活かす個性〜
- お客さまから学ぶ〜いかに打席に立って状況を知るか〜
- 数字で会話する〜抽象度の高いワードに逃げない〜
各内容について説明していきます。
1. Changeマインド ~トレンドもプロダクトも常に変化する~
多くの企業で求められる社員へのスタンスは、「自分自身で自立して成長し続けられるか」です。SaaSにおける"成長マインドセット"といっても良いかもしれません。
SaaS業界は市況の変化やプロダクトのアップデートのスピードが非常に速く、変化に対して常にキャッチアップし続ける必要があります。
日本のSaaS市場は2023年に1.4兆円に達すると見込まれています。2020年から上方修正が繰り返されており、SaaS市場の成長の勢いに陰りは見えません。2027年には2兆円を超えると予想されており、2023年からのCAGR(年平均成長率)は11%と見込まれています。
出所: 富士キメラ総研の市場調査レポートより
常に新しい情報を取り入れ、自身のスキルや考え方をアップデートし続ける必要があります。
例えば、Xで業界のキーマンやメディアをフォローしたり、PIVOTやYouTubeなどのビジネスコンテンツを視聴する人が多いようです。未経験者が多いということは、多業界からメンバーが集まっているとも言えるので、もし案件の業界について詳しく知りたい場合には、組織内にその業界出身の人を見つけて聞いてみるのはおすすめの実践方法です。
2. コミュニケーションがキー ~SaaSはいかに他ファンクションと会話できるか~
SaaS企業の多くは、「The MODEL」と呼ばれる組織を採用しています。
The MODELとは、マーケティング(MKT)、インサイドセールス(IS)、フィールドセールス(FS)、カスタマーサクセス(CS)という4つの部門(ファンクション)に営業プロセスを分類し、各部門の情報を可視化・数値化することで、それぞれ専門性を活かし、組織全体の生産性を向上させるビジネスモデルです。
特に重要なのは、各部門が持つ固有の情報や視点を共有し、活用することです。例えば、あなたがFSの担当であれば、次のような連携が考えられます。
- MKT部門からデータに基づく最新のトレンド情報を得る。
- ISとは当日の商談の期待値などを共有し、より効果的な商談にする
- CS部門からは既存顧客の実際のニーズやプロダクトの使用状況を学ぶ
- 開発部門とは、プロダクトアップデートの予定や開発の優先順位について情報交換し、顧客への適切な提案を行う。
マネジャーから落ちてくる情報と、現場のメンバー同士が感じている課題感は、優先順位付けの内容やスピード感にズレが生まれることがあります。全体観や細部まで共有されることは多くないからです。
自分の仕事の質を上げるためにも、各ファンクションに気軽に声をかけられる人を増やすことが重要です。実際、多くのハイパフォーマーは、このような横断的なコミュニケーションを得意としています。意識的に各ファンクションに知り合いを作るために、部活やランチ会に顔を出したり、繋いでもらったりすることを最初の3ヶ月等は意識しても良いかもしれません。
3. 再現性とこだわり ~効率型組織の中で活かす個性~
TheMODEL型をとり、組織効率性を重視するSaaS企業において、個人に求められるスキルセットは2つの側面があります。
1つは、組織のルールや基本的な業務プロセスを最短最速で習得し、再現性を持たせる能力です。組織全体の一貫性が保たれ、新しいメンバーが速やかに戦力となることができます。もう1つは、自分なりの創意工夫や強み、つまり個性やこだわり、意志(will)を磨き上げていく能力です。この2つのバランスを取ることが、SaaS企業で成功するための鍵となります。
成熟した企業であればオンボーディングが用意されていることが多いですが、ベンチャー企業だと即興OJTで対応していることが多いです。そういう中では、自分のスタイルに似ている先輩社員を見つけ完コピから始めることが早いでしょう。
一方で、個性を活かすという意味では、SaaS企業は転職者や業界未経験者が一定数いることが多いため、周囲の仲間から学び、同時に自分の知識や経験を仲間に還元していくことを意識するのが良いでしょう。
ただし、最初から前職のやり方を振りかざすことはご法度です。どちらかというと最初は、組織のスタンスややり方にいかに馴染むかを意識したほうが良いでしょう。言い換えると、「アンラーニング」の概念です。これまで身につけてきたスキルや知識を組織に還元しつつも、必要に応じて既存の考え方や習慣を一度取り払い、新しい環境に適応する能力を指します。
まずは、今の組織のスタンスを尊重する、受け入れるというところから始めるのが良さそうです。SaaS企業では組織の効率性と個人の独自性のバランス、そして学びと還元の循環が重要です。
4. お客さまから学ぶ ~いかに打席に立って状況を知るか~
1つ目の「Changeマインド ~トレンドもプロダクトも常に変化する~」にも繋がりますが、メディアやSNSから情報を掴むことは大切です。
しかし、最も効果的なのはお客さまから直接学ぶことです。「お客さまから学ぶ」というと、『お客さまは学ばせるために時間を提供しているわけではない』という指摘を受けることもありますが、ここで伝えたいことは実際の課題やニーズという一次情報にいかにアクセスできるかが重要だということです。
直接的な情報収集があることで、個社特有の問題なのか、業界全体のトレンドなのかを見極める力が養われ、自分の中に知識が蓄積されていきます。
また、SaaS企業にとって「顧客第一主義」は非常に重要です。
理由は2つです。
❶ビジネスモデル的にLTV(顧客生涯価値)をいかに伸ばせるかが重要なため
❷プロダクトを自社本位ではなく、いかにPMF(プロダクト・マーケット・フィット)させていけるかが成功の鍵になるため
PMFとは?
自社のプロダクト(商品・サービス)が顧客のニーズを満たし、正しい市場に提供されている状態をPMF(Product Market Fit/プロダクトマーケットフィット)といいます。
顧客の利用状況やフィードバックをリアルタイムで把握し、迅速に対応することが競争力につながります。顧客の声に真摯に耳を傾け、素早く対応することで、顧客満足度が向上するだけでなく、新たなビジネスチャンスが見つかることもあります。
5. 数字で会話する ~抽象度の高いワードに逃げない~
SaaS業界では、「ARR」「MRR」を指標として置いていることが多いです。各ファンクションにおいて、その数字を伸ばすための定数と変数も分かってきます。組織、個人と分解していくと自分のKPIを達成するためにどの部分を改善するべきなのかおおよその目処は立ってきます。
※ARR、MRRとは
◇ARR=Annual Recurring Revenue
年間経常収益。ARRは、毎年発生する収益を表します。
◇MRR=Monthly Recurring Revenue
月次経常収益。MRRは、毎月発生する収益を表します。
MRRが「毎月」の経常収益を算出するのに対し、ARRは、「毎年」発生する収益を表します。出所:テックタッチ『MRR、ARRとは? SaaSビジネスに欠かせない指標の改善ポイントを解説』
実際の指標としては、例えば、以下のような数字(KPI)を検討します。
▼インサイドセールスの例
・Activity(架電数)
・Connect数
・アポ獲得数
・案件化数 など
▼フィールドセールスの例
・リードタイム
・商談数
・単価
・受注率 など
方向性が定まれば、後はマネジャーやトレーナーが自分なりの仮説を立てつつ、改善に向けたアクションをすればよいです。ここで重要なのは、「頑張ります」「改善します」などの抽象的なワードではなく、具体的な数字を用いて現状と目標を明確に示すことです。
例えば、「新規案件からの受注金額を20%増加させるために、1企業あたりの平均単価を現在の100万円から120万円に引き上げることを目指します。」といった形で説明できると、マネジャーとの建設的な会話が可能になります。
オンボーディング時期に対してその数字は妥当なのか、別のKPIの方が優先したほうがいいのかなど、より具体的な議論ができるようになります。
ARR、MRR、チャーンレートなどの指標を活用し、抽象的な表現や感覚的な言葉に頼らず、常に具体的な数字を用いて会話することを意識してください。これにより、より明確な目標設定と効果的な改善策の立案が可能になり、個人としての成長にもつながります。
以上、SaaS業界未経験者が押さえておきたい5つのポイントについてお話しました。SaaS業界では再現性が重視されるため、適切なスタンスを持って早期戦力化を図ることが重要です。その中で、自分自身のスタンスや社内ネットワークづくりを意識しながら自分らしく働くことが、仕事における自己実現につながります。
改めて、5つのポイントについておさらいします。
- Changeマインドを持ち、常に変化するトレンドやプロダクトに柔軟に対応できる姿勢をつくる(自分のやり方に固執しない)。
- コミュニケーション能力を高め、他部門との効果的な情報共有と協働を実践する(孤立奮闘しない)。
- 効率性を保ちながら個性を活かす方法を見出し、自分自身の強みを活かせるプロジェクトに積極的に参加する(自分の経験を組織に活かす)。
- 実際の課題やニーズという一次情報にアクセスし、お客さまに興味を持ち続ける(画一的な対応をするのは避ける)。
- 抽象的な表現を避け、具体的な数字を用いてコミュニケーションを図る(自分の言葉を俯瞰する)。
SaaS業界は急速に変化し続けています。だからこそ面白い領域です。
常に学び続け、最先端を走りながら自社プロダクトで業界にインパクトを与えることは楽しいはずです。そんな楽しめる状況に向けて、最初のオンボーディング期間の過ごし方を意識しましょう。
これらのスタンスは一朝一夕で身につくものではありません。日々の業務の中で意識的に実践し、失敗から学び、成功体験を積み重ねていくことで、きっと自分らしく働く環境づくりに繋がっていくことだと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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