お局はなぜ生まれるのか? ── 今すぐ確認すべき組織構造の歪み
人手不足が叫ばれる中、多くの組織は業務の属人化を許容せざるを得なくなっています。
その属人化の延長線上に、いわゆる「お局(つぼね)」の誕生があります。
本人以外に聞かないとわからない状態、つまり業務がブラックボックス化した状態を放置し続けると、本人の中で「自分が頼られている=自分は特別」という錯覚が育っていきます。
これは本人の問題だけではなく、組織構造と、それを把握・是正できない上司のマネジメント不全が生んだ結果かもしれません。

1. お局はなぜ生まれるのか ── 属人化の延長線上にある錯覚
「お局」という言葉は、もともと江戸時代の大奥における女官の敬称が由来とされています。
近年では、勤続年数が長く影響力の強い社員を指し、口うるさい・威張るといった揶揄のニュアンスを含んでいることが多い言葉です。
「お局」という呼び方自体が語弊を招きかねない表現ですが、現場では実際に「お局さん」「ベテラン社員問題」としてよく相談を受けるため、本記事でもこの言葉を使っていこうと思います。
業務が言語化・仕組み化されないまま、特定の個人に聞かないと物事が進まない状態が続くと、本人の中で「自分がいないと回らない=自分は特別」という認知が強化されていきます。
これは認知バイアスの一種で、頼られる回数が増えるほど、自分の重要性を過大に評価してしまう心理的な傾向によるものです。
こうした状態が積み重なった結果として生まれる状態を「お局化」と呼びます。
つまりお局化とは、組織が仕組み化を怠ったツケが、個人の勘違いという形で表面化しているにすぎないということです。
裏を返せば、同じ環境に置かれれば誰でもお局化しうるということでもあります。

2. なぜその構造が生まれるのか──仕組み化の放棄と上司の力不足
お局化を生む組織構造として、原因は大きく二つあると考えられます。
一つ目は、仕組み化の失敗という組織の問題です。
人が増えていく中で、マニュアル化や情報の整備を怠った結果、その業務にアクセスする手段が本人に聞く以外に存在しない、という状況はよく聞きます。
忙しさを理由に後回しにされた結果、聞くこと自体がいつの間にか業務フローになってしまいます。
二つ目は、上司の力不足です。
上司自身が業務の詳細を把握していない場合、本人の裁量や発言力に待ったをかけることはなかなか難しくなります。
逆に言うと、業務を回すこと自体が目的化し、「あの人に任せておけば回るから、そこには強く踏み入らない」という判断をしてしまうことは、上司の思考停止です。
実態は管理放棄です。
つまり、専門的な業務に関しては上司が詳細を把握しに行かないことから、上司自体もその業務に対する解像度が低くなってしまう、ということが原因です。
新任の上司が着任した時点で、すでにお局化が進んでいる場合もありますが、いずれにしても、できるだけ早い段階で詳細まで業務を把握しておくこと、ないし組織のネックを見つけ出すことは、上司にとって重要なアクションになります。

3. 放置するとどうなるか──離職とエンゲージメント低下の実害
ここまで見てきたお局化の構造を放置すると、組織には大きく3つの実害が生まれます。
一つ目は、心理的安全性の低下です。
要は組織の中で健全な対立やコミュニケーションが生まれなくなる、という問題です。
お局社員、ベテラン社員の存在を前提として組織を運営すると、周囲がその人にすり寄っていったり、逆に腫れ物扱いをして関わらないようにしたりします。
いずれにしても、適切なコミュニケーションは生まれません。
業務を回すこと自体が目的になってしまい、組織として生産性を上げる、より良い組織運営をする、といった本来の目的には近づきにくくなります。
二つ目は、業務効率化・DXの停滞です。
いつまでたっても業務効率化が進まないのは、組織全体のことよりも自分自身を守ろうとする人が増えていくからです。
「今の業務のやり方を変えるのが面倒だから」「せっかく慣れたのに新しいやり方をキャッチアップするのが大変だから」といった、個人のメリットを優先する組織は強くなりません。
三つ目は、周囲の早期離職です。
お局社員、あるいはベテラン社員の存在を前提とした組織そのものへの違和感は、いずれ離職につながります。
わざわざ自社を選んで入ってきてくれた社員であっても、組織への不信感が積み重なれば、いずれ離職を招くことになります。
これらはいずれも、お局社員個人の問題というより、その状態を許容し続けてきた組織の意思決定の結果です。

4. 組織が打てる策
ベテラン社員問題、お局問題というのは、表現が一人歩きしてしまい、問題の本質が見えづらくなるため、なかなか解決が難しいテーマです。
しかし詰まるところ、そのお局社員が力の源泉としている業務を把握し、「その人に聞かなければ解決しない」という業務フローを解消していくことが、まずやるべきことです。
そもそも属人化自体が悪いわけではありません。
属人化していることを棚に上げて、組織や周囲に悪影響を及ぼしていること自体が良くない、ということです。
なお、いずれのステップにおいても、お局社員本人の態度や性格を批評・評価するようなことは避ける必要があります。
問題にすべきは業務フローであり、個人の人格ではありません。
Step1. 自覚を確認する
本人が「自分がいないと回らない」ことを誇りに感じているのか、負担に感じているのか。
同時に、上司が「自分は業務を把握できていない」ことを自覚しているかどうかも重要です。
まずはここを確認するところから入ります。
Step2. 業務の棚卸しをする
「その人にしかできない業務」を、本人を巻き込みながら棚卸しします。
この段階では改善や引き継ぎを求めず、可視化のみに徹します。
Step3. ブラックボックスを解消する
棚卸しで洗い出した業務のうち、優先度の高いものからマニュアル化を進めます。
ここでようやく、「聞かなくてもわかる」状態が部分的に生まれ始めます。
ただ少しだけ、よりリアリティのある相談に対して記載すると、
本人に確認しても、「そんなつもりはない」「みんなのためにやっているだけ」とはぐらかされる。
「あの人は優秀だから」「今さら口を出すと角が立つから」と、動こうとしない上司。
というのは往々にして遭遇します。
本人が棚卸しに非協力的な場合、それは「自分が追及されている」と受け取られていることがほとんどなので、
本人だけを対象にした調査ではなく、組織全体で行う取り組みだと伝え直すことが先決です。
上司が動こうとしない場合は、動かない上司に実行を期待するのではなく、棚卸しの実行主体を人事側、あるいはその上司のさらに上位の管理職に移し、期限を切って進捗を管理する形に変える必要があります。
おわりに
お局化は、特定の個人の性格や資質によって起きているように見えて、実際には「聞かないとわからない」状態を放置してきた組織自身が生み出した構造です。
本人を異動させたり注意したりしても、同じ構造が残っている限り、次の「お局」が別の誰かとして生まれるだけです。
人事に求められているのは、個人を問題視することではなく、属人化を許容し続けてきた業務設計とマネジメントのあり方に向き合うことです。
棚卸しという地味な一歩から、まず着手してみてください。
自社だけでの対応が難しい場合は、ぜひお問い合わせください。
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